岩手県医療局は,2020年1月15日,サイトに「岩手県立病院等医療事故等の公表について」をアップし,5件の医療事故を公表しました.
私は,5件のうち,平成27年3月に県立二戸病院でがんを見落とされた患者の遺族の代理人です.
60歳代の男性は,健康診断で肺の陰影を指摘され,受診したクリニックで県立病院を紹介されました.
県立病院の平成27年3月のCT検査の放射線科医作成の画像診断報告書に「腎細胞がんを疑います」と記載されていたにもかかわらず,呼吸器内科の主治医はそれを見ていませんでした.
この主治医は,肺の疾患を疑って実施した同年6月,9月のCT検査の画像診断報告書(放射線科医の臨床診断「腎細胞がん」が記載されている)も見ていませんでした.
平成28年8月にがんが脳に転移して脳出血で県立病院に運ばれ救急の医師がカルテを見て腎細胞がんが発見されました.
患者は平成29年1月に腎細胞がんで死亡しました.
なお,民事的には令和元年12月に訴訟は行わず示談により解決しております.
病院からの謝罪は,令和元年12月に書面でありました.
遺族の思いを以下紹介します.
県立二戸病病院でがんを見落とされた遺族の思い
父は、仕事を忙しくしていましたが、かかりつけ医からの紹介状をもらった翌日、県立二戸病病院に行っています。定期検査もきちんと受けていて、父には何の落ち度もありません。
2度の定期検査も同じ医師が担当し、画像診断報告書が読まれることはありませんでした。
私たち家族が見落としを知ったのは、父が転移による脳出血で入院したときでした。ショックや今後の生活の心配でいっぱいで、後遺症に苦しむ父を見て、早く治療を始めていれば脳出血を防ぐことができたんじゃないか、苦しい思いをしなくて済んだんじゃないか、と憤りを感じました。
父はがんを告知されたとき『(定期検査で)良くなってたんだけどなぁ』と言って、頭をガクッと落としていました。その姿を見て、父が受けていた定期検査は医師の見落としにより全く意味を成しておらず、こんなにも無念なことはあるだろうか、と胸が押し潰される思いでした。
苦しんで亡くなった父を見て、何も悪いことをしていない父が、人生の最期にどうしてここまで辛い思いをしながら亡くならなければならなかったのか、今でも思い出すのがとても辛いです。
見落としがなかったら、母の存命中に告知を受け闘病ができ心強かったと思いますし、旅行など家族で過ごす時間や思い出を作ることができたはずです。そういった、人生の過ごし方や生き方を自分で決める時間を奪われたことは許されません。
病院側には、事故がわかった時点で説明と謝罪をして欲しかったです。
再発防止として、患者が検査票や報告書を見ることが出来ればよいと思います。
父や私達と同じ思いをする人が今後二度とあらわれないよう、再発防止に努めて欲しいです。(2020年1月15日)