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裁判費用(印紙代)節約のために

 医療裁判は,費用がかかることがネックになっています.
 そこで,160万円の一部請求で印紙代を節約するのがお薦めです.

1 印紙代

 裁判所に提出する訴状には,請求額に応じて印紙を貼ります.
 1億円の請求ですと印紙代は32万円,5000万円の請求ですと印紙代は17万円.3000万円の請求ですと印紙代は11万円です.
 これは,原告にとっては,大きな負担です.かといって,印紙代が高いので提訴を見送るというのも不合理な話です.

 損害賠償額の全部ではなく,その一部だけを請求すると,印紙代は請求額に連動して安くなります.
 そこで,160万円の一部請求にしますと.印紙は1万3000円ですみます.
 140万円までの請求は簡易裁判所,140万1円の請求からは地方裁判所の管轄になります.そして,140万1円でも160万円でも印紙代は1万3000円と同じです.ですから一部請求は160万円がお薦めです.

2 請求拡張

 ボーナスがはいったとき,あるいは証人尋問が終わり勝訴を確信したときなどに,追加の印紙を貼って,請求を拡張します.請求拡張は何回でもできます.
 拡張しないで160万の勝訴判決をもらった場合,控訴して請求を拡張します.

3 一部請求と時効

 1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨明示して訴の提起があつた場合、訴え提起による消滅時効中断の効力は、その一部の範囲においてのみ生じ残部におよばない,とされています(最高裁昭和34年2月20日判決民集13巻2号209頁).
 したがって,消滅時効(不法行為であれば3年,債務不履行であれば10年)の完成に留意し.時効完成前に請求を拡張すればよいのです.

 ※ 契約関係のある者(医療機関の開設者)に対し,契約に基づく債務の不履行による損害賠償を求めるのは,債務不履行構成です.なお,不法行為を行った者(医師,看護師,技師など)の使用者として不法行為構成もできます.
契約関係にない医師個人,看護師個人などに請求するのは,不法行為構成です.

4 一部請求と遅延利息

 不法行為構成の場合,不法行為時から年5%の遅延利息が発生します.
 債務不履行構成の場合,請求時から年5%の遅延利息が発生します.そこで,債務不履行構成では,160万に対しては提訴時から,残りは請求拡張時から,それぞれ年5%の遅延利息が発生することになります.

 
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