Q&A
よくあるご質問を集めてみました
数年前の事件なのですが,診療記録は処分されてしまいますか?
診療録については、診療完結の日より5年間の保存義務があります.
診療録以外の病院日誌、処方箋、手術記録、エックス線写真等については、診療完結の日より2年間の保存義務があります.
とくに保険医療機関の場合、診療録以外の療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録(検査所見記録、エックス線照射録等)については、診療完結の日より3年間の保存義務があります.
詳細は,厚労省「法令上作成保存が求められている書類」を参照してください.
知人にそろそろ時効ではないかと言われたのですが、時効は大丈夫でしょうか?
診療契約の相手方でない人(医師個人、看護師個人など)に対する損害賠償請求権は、「損害および加害者を知った時」から3年で時効消滅します.「損害及び加害者を知った時」とは、「被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時」と解されています.
診療契約の相手方(医療機関の開設者)に対する損害賠償請求権は、請求権を行使できたときから10年で時効消滅します.
いずれにしても,年月が経つと記憶も薄れ立証が困難になりますので、お早めに弁護士に相談することをお奨めします.
提訴時の裁判費用を節約できませんか?
裁判所に提出する訴状には、請求額に応じて印紙を貼ります.
たとえば、5000万円の請求ですと印紙代は17万円ですが、160万円の請求ですと1万3000円です.
つまり、損害賠償額の一部だけを請求する訴訟では、印紙代は請求額に連動して安くなります.
140万円までの請求は簡易裁判所の管轄で、140万1円の請求からは地方裁判所の管轄になります.140万1円でも160万円でも印紙代は1万3000円と同額です.160万1円からは印紙代は1万4000円になります.ですから、160万円の一部請求で地裁に提訴するのが、経済的でお薦めです.
◆ 一部請求で気をつけること
1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨明示して訴の提起があつた場合、訴え提起による消滅時効中断の効力は、その一部の範囲においてのみ生じ残部におよばない、とされています(最高裁昭和34年2月20日判決民集13巻2号209頁).
したがって、消滅時効(不法行為であれば3年、債務不履行であれば10年)の完成に留意し、時効完成前に請求を拡張する必要があります.
※ 契約関係のある者(医療機関の開設者)に対し、契約に基づく債務の不履行による損害賠償を求めるのは、債務不履行構成です.なお、契約関係のある者にも、不法行為を行った者(医師,看護師,技師など)の使用者として不法行為構成で請求できます.
契約関係にない医師個人、看護師個人などに請求するのは、不法行為構成となります.
医療過誤訴訟では、遅延利息、近親者慰謝料の点から、不法行為構成によることが多いと思われます.
◆ 一部請求と遅延利息
不法行為構成の場合、不法行為時から年5%の遅延利息が発生します.
債務不履行構成の場合、請求時から年5%の遅延利息が発生します.そこで、債務不履行構成では、160万に対しては提訴時から、残りは請求拡張時から、それぞれ年5%の遅延利息が発生することになります.
医療過誤訴訟では、不法行為構成が一般的で、不法行為構成ですと、一部請求でも遅延利息の点でのデメリットはありません.
◆ 請求拡張
ボーナスがはいったとき、あるいは証人尋問のあとに勝訴を確信したときなどに、追加の印紙を貼って請求を拡張することもできます.請求拡張は控訴審でもできますし、何回でもできます.
請求を拡張しないで160万の勝訴判決をもらった場合、控訴して請求を拡張することもできます.
時効の点さえ気をつければ、一部請求は合理的な費用の節約方法です.
もし患者側が医療裁判に負けたら、相手方(病院・医師)の弁護士費用を支払わされるのでしょうか.
いいえ.医療過誤に基づく損害賠償裁判で患者側が敗訴しても、病院・医師側の弁護士費用の負担を裁判所から命じられることはありません.
裁判所は、判決で、訴訟費用の負担を命じますが、その「訴訟費用」には、弁護士費用は含まれていません.
「訴訟費用」で高額なものは、訴状に貼った印紙代です.もともと患者側(原告)が印紙を購入して訴状に貼っていますので、敗訴した場合被告(病院・医師側)に印紙代の負担を求めることができないだけのことです.裁判所書記官の調書作成費用も「訴訟費用」に含まれますが、調書の1枚目と2枚目以降で料金が違い10円単位で計算します.しかし、その調書作成費用は、微々たる金額ですので、実際には請求されないことが多いです.
また、一般に、裁判を起こしたこと自体が明らかに不当な場合は、提訴自体が不法行為となり損害賠償義務を負うことがありますが、提訴自体が明らかに不当な場合は通常弁護士が代理人として就くことはありませんので、弁護士が代理人に就いて提訴し遂行する医療裁判では、提訴自体が不法行為になることはまずないと考えてよいでしょう.
谷直樹法律事務所
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