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原因分析報告書 事例番号220001~220015
事例番号:220015
〇 妊娠40週に胎盤の石灰化を理由に分娩誘発を決定したことは一般的ではない。
〇 アトニンの初期投与量、時間毎に増量する量が推奨量に比して多いことは一般的ではない。
〇 臍帯脱出後の対応に関しては、臍帯還納を行ったことは一般的ではない。
事例番号:220014
□ 学会・職能団体に対して
妊娠初期の外来で、内診や超音波検査により子宮や付属器の評価を確実に行い、異常の有無にかかわらずその所見を記録することは重要である。学会においてもその周知に努めるべきである。
妊娠中の喫煙は、常位胎盤早期剥離、胎児発育不全など多くの周産期合併症の発症に関与している。学会は、妊婦の喫煙の影響について積極的に広報し、妊婦の禁煙を指導していく必要がある。
事例番号:220013
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離は、200分娩に1例と比較的発症率が高く、周産期死亡や妊産婦死亡も起こる重篤な疾患である。その疾患の初期臨床症状としては性器出血や下腹部痛が多いが、妊娠中のそのような症状への対応などを妊産婦に積極的に広報できるように、常位胎盤早期剥離の早期発見や対応策についての研究を推進することが望まれる。
事例番号:220012
〇 分娩監視装置を装着したのが、来院から1時間後であったこと、入院時の体温が37.3℃であったのに入院翌日に血液検査を行ったことは一般的ではない。
〇 アトニン-Oの初期投与量、時間ごとに増量する量、開始にあたって同意書の記録がなされていないこと、胎児心拍数が徐脈を呈したあとアトニン-Oの点滴を増量したことは基準を逸脱している。
事例番号:220011
〇 午前5時25分から、午前7時25分までの2時間、胎児心拍数が聴取されなかったことについては、午前6時以降の陣痛や妊産婦の様子に関する診療録への記載がないため、分娩第Ⅰ期の活動期であったか否かの判断が出来ず、医学的妥当性の評価はできない。
〇 医師が経腟式急速遂娩ではなく帝王切開による急速遂娩を決定したことについては、内診所見の記録がないため断定的な評価はできない。
〇 帝王切開を決定して44分後に児を娩出したことは、標準から大きく逸脱していない。
事例番号:220010
〇 双胎間輸血症候群の有無に関係なく、胎児の異常所見を評価できなかったのは、標準的な産科医療とはいえず、また、その異常所見に対して原因検索や対症療法を行わずに、深夜まで待機したことは、産科医療として適確性に欠ける。
事例番号:220009
〇 分娩経過中の胎児心拍の確認方法、子宮収縮薬の使用法、および子宮収縮薬使用中に分娩監視装置が使用されなかったことは、一般的ではない。
事例番号:220008
〇 子宮内感染が疑われ分娩が進行している状況では、胎児機能不全の早期診断のために分娩監視装置による連続的な胎児心拍数の確認や頻回の胎児心拍数聴取などにより、厳重な胎児管理が望まれるが、本事例では実施されておらず配慮に欠ける。
〇 間欠的ドップラによる胎児心拍数聴取によって胎児一過性徐脈の波形の分類を行っていたことは、医学的妥当性がない。
事例番号:220007
〇 妊娠39週1日の午前1時13分にトイレ歩行のために分娩監視装置を外したことは、遅発一過性徐脈から胎児心拍が回復して約8分しか経過しておらず、胎児心拍の評価を慎重にするために分娩監視装置を装着したまま床上排泄を介助することも一つの手段であり、医学的妥当性には賛否両論がある。
〇 入院後24時間以上経過し、絨毛膜羊膜炎が疑われる状況で、内診によって分娩進行状態を確認するなどの母児の全身管理が行われていないことは一般的ではない。
〇 妊娠39週0日の午後7時50分から約3時間半の間、胎児心拍数が確認されていないことは、分娩の活動期に入っていたことや絨毛膜羊膜炎が疑われていたことを考慮すると一般的ではない。
事例番号:220006
〇 アトニン点滴の使用方法は、日本産科婦人科学会および日本産婦人科医会によって取りまとめられた「子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点」で示す使用量が守られておらず、標準的とは言えない。
〇 人工破膜は、4回経産婦であれば、臍帯が先進部あたりに下降していないことを確認し、児頭の固定と分娩進行を期待して行うことに問題はないが、臍帯下垂の有無が確認されていなかったとすれば、本事例のタイミングで人工破膜を行ったことには検討の余地がある。
事例番号:220005
〇 無痛分娩については、麻酔薬の注入前、注入後の胎児の状態の評価が行われていないことは標準的でなく、遅発一過性徐脈が繰り返しみられていることに対して、何らかの保存的処置を行わなかった点は一般的ではない。
〇 吸引分娩とクリステレル胎児圧出法の併用については、吸引分娩開始時の胎児心拍数記録では基線細変動は減少し、80拍/分前後の徐脈が持続する遷延性徐脈がみられているが、児頭を押し上げることにより胎児心拍数の回復がみられたと判断し、その判断に基づき吸引分娩とクリステレル胎児圧出法を続行したことは、医学的妥当性がない。
〇 本事例の57分間に及ぶ合計23回の吸引分娩とクリステレル胎児圧出法の併用は妥当でない。
事例番号:220004
〇 帝王切開既往妊娠でハイリスク妊娠であるが、前回帝王切開創部に関する当該分娩機関の認識について、診療録への記録が明確でない。
〇 また、前回帝王切開を行った医療機関に、術式等の問い合わせを行ったかどうか記録上は不詳であり、その記載がないとすれば、妊娠37週以降の陣痛発来前の帝王切開を予定する場合であっても、前回の帝王切開創が通常の創ではないとの情報が妊婦本人などから得られた場合、前医に前回帝王切開の方法について問い合わせ等をして、子宮破裂の危険について評価しておくことが望ましく、本事例においてはそのような配慮が欠けていると思われる。
事例番号:220003
〇 本事例で行っていたドップラによる間欠的児心拍聴取の聴取間隔については妥当性に欠けている。
〇 分娩第Ⅰ期であっても、3時間ドップラ聴取を行わないことは分娩第Ⅰ期の胎児監視として一般的ではない。
〇 頻回にドップラ聴取すべき分娩第Ⅱ期において、胎児心拍が一度も聴取されていなかったことは、分娩第Ⅱ期の胎児監視として、妥当性に欠けている。
〇 出生後、児の口腔・鼻腔吸引は行われていたが、バッグ&マスクによる陽圧換気あるいは酸素吸入は行われておらず、蘇生措置は不十分であった。
〇 嘱託医療機関との連携による新生児搬送は速やかに行われたが、出生直後の児の蘇生をはじめとする搬送までの対処が不十分であった。
事例番号:220002
□ 学会・職能団体に対して
学会・職能団体は分娩取り扱い機関に対して、妊産婦との緊急時の連絡対応、連絡方法の確認の更なる徹底を図るように指導することが望まれる。
本事例のような予期せぬ墜落分娩でしかも被膜児のまま娩出することも起こりうることについて、学会・職能団体は、今後、電話連絡で墜落分娩が予測された際の、状況に応じた妊産婦および家族への指導ガイドラインを策定しておくことが望まれる。
墜落分娩を取り扱う資格を持つ救急救命士養成、さらには新生児蘇生法の一層の普及を国・地方自治体に働きかけることが望まれる。
日本版救急蘇生ガイドラインでの大人を対象とした一次救命処置では、救急システムとして電話連絡の際の口答指示についての指導が記載されている。
したがって、このような墜落分娩が予測された際のガイドラインの整備を進めることで、墜落分娩を防ぐ試みと墜落分娩となった(なることが予測される)場合の二重の安全性を高める努力を行うことが望まれる。
事例番号:220001
□ 学会・職能団体に対して
頭位分娩での臍帯脱出の発症率は極めて低く、その原因の分析が進んでいない現状がある。
今後、破水(人工破膜・自然破水)、羊水過多症、メトロイリンテルの使用、分娩誘発、巨大児、低出生体重児などの要因と臍帯脱出との関連について学会レベルで症例を集積し、それらの因子と臍帯脱出との因果関係を検討することを要望する。
谷直樹法律事務所
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