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原因分析報告書 事例番号260101~260215
事例番号:260215
〇 子宮内感染症が疑われる状況で、胎盤病理組織学検査を行わなかったことは一般的でない。

事例番号:260214
〇 胎児心拍数陣痛図で基線細変動の減少を伴う軽度変動一過性徐脈とも高度遅発一過性徐脈とも判読される一過性徐脈の反復所見が認められる状況で胎児心拍数モニタリングを中止したことは一般的ではない。
〇 その後、一時帰宅を許可したことは選択されることの少ない対応である。

事例番号:260213
□ 学会・職能団体に対して
胎児発育不全の診断・評価について更なる検討が望まれる。

事例番号:260212
〇 異常胎児心拍パターンを認める状況で分娩監視装置を中止したことは一般的ではない。
〇 リトドリン塩酸塩の投与については、胎児心拍数陣痛図に異常胎児心拍パターンが認められていたものの、妊娠29週という早い妊娠週数で常位胎盤早期剥離の臨床症状もなかった状況を考慮すれば常位胎盤早期剥離を疑わず切迫早産の治療として投与したことはやむを得ないという意見と、超音波断層法などを用いた常位胎盤早期剥離の鑑別診断をせずに投与したことは基準から逸脱しているという意見の両方がある。
〇 その後の胎児心拍数陣痛図では、胎児の健常性悪化の所見が認められ、人工早産を図る必要がある状況で、原因検索をせず胎児蘇生法を行ったのみで経過観察としたことは一般的ではない。
〇 胎児低酸素状態を疑う胎児心拍パターンが認められ、かつ妊産婦の全身状態の悪化を示唆する症候が出現している状況で、バイタルサインの確認のみを行い経過観察としたことも一般的ではない。
〇 その後、常位胎盤早期剥離と診断し、高次医療機関NICU医師の立会いを依頼した上で自施設で帝王切開したことは選択肢のひとつであるという意見と、児を早期に娩出する見通しがない状況で、母体搬送を考慮せずに自施設で帝王切開したことは一般的ではないという意見の両方がある。
〇 帝王切開決定後に分娩監視装置を外してから手術室入室までの胎児心拍確認方法について、胎児心拍数異常波形を示していた状況であることから分娩監視装置の装着による連続監視をすることが一般的であるという意見と、手術準備のためドップラ法のみで確認していたことはやむを得ないという意見の両方がある。
〇 早産、低出生体重児、心停止の状態で出生した児に対し、直ちにバッグ・マスクによる人工呼吸を行ったことは一般的であるが、生後5分に胸骨圧迫を開始したこと、および気管挿管の時期は選択されることは少ない。

事例番号:260211
〇 生後1時間、2時間に血糖値を測定したこと、また、10%ブドウ糖を持続投与したことは一般的であるが、胎児発育不全により予備能が低下している児に対して生後2時間以降の血糖モニタリングを行わなかったことは一般的ではない。

事例番号:260210
〇 妊娠39週5日の妊婦健診より内診所見が変化していない状態で分娩誘発を開始したとすれば、選択されることの少ない対応である。
〇 オキシトシンを乳酸リンゲル液に溶解したこと、オキシトシン投与の指示内容、および分娩誘発について口頭で同意を得たのみで診療録に記載がないことは基準から逸脱している。
〇 硬膜外麻酔を併用したことは、陣痛が微弱になることによる遷延分娩や、子宮破裂に伴う母体の自覚症状の潜在化などが憂慮されるとする意見がある一方、緊急帝王切開時の麻酔となり得ることや難産道の緊張が緩和され分娩の進行が促進されるとの意見があり、医学的妥当性には賛否両論がある。
〇 ビショップスコア3点の時点で人工破膜を行ったことは選択されることの少ない対応である。
〇 レベル3の状態が持続している状態を「胎児心拍数陣痛図も悪くなく分娩経過順調」と判断したことは一般的ではない。看護スタッフが、胎児心拍聴取困難な状況となってから20分後に医師に報告したことは医学的妥当性がない。
〇 分娩誘発前の内診所見、胎児心拍数陣痛図の判読所見、オキシトシン増量の時刻、分娩後の双合診所見等の記載がないこと、胎児徐脈となった状態おいても子宮破裂を念頭において判断した記録がないことは一般的ではない。

事例番号:260209
〇 入院後の胎児心拍数波形レベル3の状況で、トイレ歩行後に分娩監視装置を装着せずに経過観察としたこと、体位変換などの処置を行わなかったことは一般的ではない。
〇 基線細変動が消失し、高度変動一過性徐脈が認められている状態でオキシトシン点滴を行ったことは基準から逸脱している。
〇 また、胎児心拍数波形レベル5の状況で、その後さらに悪い波形を呈したにもかかわらず吸引分娩を選択したことは医学的妥当性がない。

事例番号:260208
〇 母体搬送中の状況について、診療録に記載がないことは一般的でない。

事例番号:260207
〇 胎児心拍数波形レベル5の状況で、急速遂娩を試みずに経過観察としたことは基準から逸脱している。

事例番号:260206
〇 分娩誘発に関する説明・同意取得内容が診療録に記載されていないこと、胎児心拍数波形レベル3以上の異常波形である状況で、ジノプロストン錠の6錠目を投与したことは一般的ではない。
〇 分娩監視装置で連続モニタリングを行わずに、ジノプロストン錠を投与したことは基準から逸脱している。
〇 バック・マスクによる人工呼吸を見直さずに続けたことは一般的ではないという意見と、上気道の先天異常があり気管挿管が困難なのでやむを得ないという意見の賛否両論がある。

事例番号:260205
〇 子宮手術既往歴がある妊産婦に対して、子宮破裂の可能性や考えられる分娩方針について、診療録に説明を行った記録がないことは一般的ではない。
〇 また、口頭による説明のみで経腟分娩を選択したとすれば基準から逸脱している。
〇 子宮収縮薬の使用方法は基準から逸脱している。

事例番号:260204
〇 胎児心拍数陣痛図で、約4分間持続する高度遷延一過性徐脈を認めた状況で経過観察し、その後一旦胎児心拍数モニタリングを中断したことは一般的ではない。
〇 出生後、心拍がないことを確認している状況で、生後3分まで胸骨圧迫を開始しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260203
〇 胎児心拍数陣痛図上、胎児機能不全が疑われる状況で、硬膜外麻酔を実施したことは医学的妥当性がない。
〇 その後の胎児心拍数陣痛図ではレベル5(異常波形・高度)と判断される状況で、帝王切開を選択せず、人工破膜を行い、経腟分娩の方針を継続したことは基準から逸脱している。
〇 小児科併設医療機関であるものの、生後5分まで小児科医の要請を行わず新生児蘇生
を継続したことは選択されることは少ない。

事例番号:260202
□ 学会・職能団体に対して
調査や病態研究について
本事例のような、原因が特定できない脳性麻痺発症の事例について集積を行い、原因や病態解明のため、調査、研究を進めることが望まれる。
診療録の記載について
診療録の記載は産科医療の質の向上を図るために重要であることから、適切に記載することについての教育と指導を徹底することが望まれる。
産婦人科診療ガイドラインの普及啓発について
妊婦健診を行うに当たって、産婦人科診療ガイドラインの理解と順守は産科医療の質の向上を図るために重要であることから、産婦人科診療ガイドラインの普及啓発が望まれる。

事例番号:260201
〇 波形レベル3またはレベル4の状態で2時間毎のモニタリングで経過観察の方針としたことは選択されることは少ない。妊娠39週1日母体搬送の4時間前以降の波形レベル4(異常波形中等度)の所見を医師に報告せず約3時間経過観察したことは基準から逸脱している。

事例番号:260200
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離の予知・予防について
常位胎盤早期剥離の発生機序の解明、予防方法、早期診断に関する研究を推進することが望まれる。

事例番号:260199
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離の研究について
常位胎盤早期剥離の発症機序の解明、および予防法や診断法に関する研究を推進することが望まれる。
常位胎盤早期剥離に関する啓発について
常位胎盤早期剥離について、児が救命困難であったり、救命されても脳性麻痺になる危険性があるという現状を広く国民に知らせ、その可能性が疑われた場合には早急に受診するよう、啓発することが望まれる。

事例番号:260198
〇 胎児心拍数波形に異常を認め連続監視が必要な状況において、分娩監視装置による監視終了以降翌朝までの10時間以上、間欠的胎児心拍数聴取のみで経過観察したことは医学的妥当性がない。
〇 子宮収縮薬の使用について、口頭での説明のみであったことは一般的ではない。
〇 オキシトシンの開始時投与量と増量法は基準から逸脱している。
〇 オキシトシン投与中にプラステロン硫酸エステルナトリウム水和物を併用して投与したことは一般的ではない。
〇 子宮口全開大後36分で出口部停止と判断し吸引分娩を行ったことは選択されることの少ない対応である。
〇 吸引分娩および子宮底圧迫法の開始・終了時刻、実施回数等について診療録に記載がないことは基準から逸脱している。
〇 生後4分で保育器に収容し管理したことは、もう少し開放型ラジアントウォーマー上で観察した上で収容する必要があり一般的ではない。

事例番号:260197
〇 入院時の胎児心拍数陣痛図においてレベル3(異常波形Ⅰ)と判断できる状況で、分娩監視装置を外したことは一般的でない。
〇 鼻翼呼吸を認める状態で、早期母子接触を行ったこと、および低出生体重児かつLFDで出生した状況で、血糖測定を行わずNICU搬送時まで経過観察としたことは選択されることは少ない対応である。

事例番号:260196
〇 リトドリン塩酸塩の点滴開始時投与量は添付文書の用量を超えており一般的ではない。
〇 入院後の胎児心拍数陣痛図で異常波形を認めた際に分娩監視装置を外し超音波断層法を行ったことは一般的であるが、その後に分娩監視装置による子宮収縮の状況を確認せずに妊産婦の訴えのみでリトドリン塩酸塩の点滴投与量を増量したことは選択されることの少ない対応である。
〇 その後の胎児心拍数陣痛図で異常波形を認める状況で、分娩監視装置を外して経過観察したことは一般的ではない。
〇 妊娠28週5日の分娩当日、早産既往妊産婦から肛門に周期的に収縮するような痛みの訴えがある状況で、内診などの診察を行わずリトドリン塩酸塩の点滴投与量の増量のみ行ったこと、およびその際のリトドリン塩酸塩の投与量はいずれも一般的ではない。
〇 入院後から分娩室に移動する時点までの内診所見の記載がないことも一般的ではない。
〇 子宮口ほぼ全開大まで経過観察を続けたことは一般的ではない。
〇 胎児先進部の位置と部位を確認せずに人工破膜したことは医学的妥当性がない。

事例番号:260195
〇 自然妊娠した妊娠初期の自覚症状を認めない初妊婦に対して、ホルモン剤およびアスピリンを投与することは一般的ではない。
〇 切迫早産管理入院中のリトドリン塩酸塩の最大投与量は基準から逸脱している。
〇 リトドリン塩酸塩投与による動悸に対してメトプロロール酒石酸塩錠を処方したことは、添付文書上、妊婦には禁忌となっており医学的妥当性がない。
〇 高度遷延一過性徐脈が反復して認められるレベル4の状態において、母体に酸素投与を開始したのみで経過をみていたこと、さらに基線細変動が減少し、高度遅発一過性除脈が反復しているレベル4の状態においても経過観察したことは基準から逸脱している。
〇 吸引分娩と子宮底圧迫法の実施回数、実施時の所見等の記載がないことは一般的ではない。
〇 生後27分、児の呼吸があえぎ呼吸の状態で、搬送用の箱に収容したのみで蘇生処置等を行わなかったことは一般的ではない。
〇 出生時から搬送までの児の状態について、診療録に記載がないことは一般的ではない。

事例番号:260194
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離の発生機序の解明、および予防法や診断法に関する研究を推進することが望まれる。

事例番号:260193
〇 妊娠中の血糖スクリーニング検査を行わなかったことは基準から逸脱している。
〇 入院時のNST所見で一過性徐脈を認識しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260192
〇 来院時の胎児心拍数陣痛図で一過性頻脈が乏しく、弱い子宮収縮が頻回に認められる状況で、分娩監視装置を中断し、切迫早産の原因探索をせずにリトドリン塩酸塩注射液で切迫早産治療を開始したことは一般的ではない。

事例番号:260191
〇 家族からみた経過によると、看護スタッフから子供を預ける人を探してから来院するよう指示されたとされており、事実とすれば、選択されることが少ない対応である。

事例番号:260190
〇 搬送元分娩機関において、前回34週の早産既往や4回の流産歴があったが、妊婦健診時に一度も子宮頚管長を測定せず、妊娠管理を継続したことは一般的ではない。
〇 「家族からみた経過」の通り、腹痛出現頃に異変を感じて搬送元分娩機関に連絡
した際に折り返しの連絡をせず経過をみたとすれば一般的ではない。

事例番号:260189
〇 児の状態やバイタルサインの記載がないことは一般的ではない。

事例番号:260188
〇 分娩誘発について、文書による同意を得ていなかったとすれば基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数陣痛図上、変動一過性徐脈が出現している状態を「徐脈なし」と判断したこと、約30秒間にわたる変動一過性徐脈を「胎児心拍数の瞬時の低下」と判断したことは医学的妥当性がない。
〇 妊娠37週3日、胎児心拍数陣痛図上、連続して軽度遷延一過性徐脈が認められる状態を「一過性徐脈なし」と判断したことも医学的妥当性がない。
〇 胎児心拍数陣痛図の所見を評価せずにオキシトシン投与による陣痛促進を開始したことは選択されることの少ない対応である。

事例番号:260187
〇 NSTの再検査を行わなかったことは一般的ではないという意見の賛否両論がある。
〇 胎児心拍数陣痛図で子宮収縮の度に遅発一過性徐脈が出現しており、遅発一過性徐脈の出現から15分後に助産師が医師へ報告したことは、胎児心拍数波形の判読には10分程度を要するため一般的であるという意見と、基線細変動の減少も認められ胎児の状態の悪化が疑われるため直ちに報告をしなかったことは一般的ではないという意見の賛否両論がある。
〇 助産師から報告を受けた医師の対応としては、報告を受けた際に医師が他の分娩対応中であったことや、オンコール医師の来院に時間を要する状況であれば、助産師の報告から50分後に帝王切開を決定したことはやむを得ないという意見と、当該分娩機関は周産期母子医療センターであることから基線細変動が減少し子宮収縮の度に遅発一過性徐脈が出現する状態であれば直ちに帝王切開を決定、実施することが一般的であり、助産師の報告から50分後に帝王切開を決定したことは一般的でないという意見の賛否両論がある。

事例番号:260186
〇 プラステロン硫酸エステルナトリウムとジノプロストを併用したことは一般的ではない。
〇 ジノプロスト投与前に分娩監視装置を装着しなかったこと、およびジノプロスト投与中に一時期分娩監視装置を外したことは選択されることの少ない対応である。
〇 子宮収縮薬使用中に母体の血圧と脈拍を適宜評価しなかったことは一般的ではない。
〇 胎児心拍数波形分類のレベル3から5に至る経過に対して、保存的処置の施行および原因検索、急速遂娩の準備または実行のいずれかを検討したかどうか診療録に記録がないため不明である。たとえ、これらの処置や対応を検討していたとしても、診療録に記録がないことは一般的ではない。
〇 もし、これらの処置や対応が検討されずに経過観察したのであれば、基準から逸脱し
ている。

事例番号:260185
〇 胎児蘇生法として子宮収縮抑制薬を投与する目的は、緊急帝王切開の決定から実施までの間の緊急避難であり、分娩進行中の破水後の妊産婦に対し、リトドリン塩酸塩を投与したことは医学的妥当性がない。
〇 母体が発熱した状況で感染の評価を実施しなかったことは一般的ではない。
〇 絨毛膜羊膜炎が疑われる状況で胎盤病理組織学検査を実施しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260183
〇 管理入院中の胎児心拍数陣痛図において両児の心拍数が正確に記録されていることを確認せずに記録していたことは一般的ではない。
〇 出生後の新生児蘇生については、生後1分に心拍が確認できない状況で、胸骨圧迫を開始せず処置を続けたことは一般的ではない。
〇 NICU入院後の経過において、脳室周囲白質軟化症が疑われる児に対して、生後9日から生後29日まで頭部超音波断層法を実施せず経過をみたことも一般的ではない。

事例番号:260182
〇 妊娠39週1日のNSTを異常波形と考えずに終了したことは医学的妥当性がない。
〇 胎児心拍数陣痛図上、一過性頻脈を認めず、軽度遷延一過性徐脈が出現している状況であり、分娩監視装置を連続装着しなかったことは医学的妥当性がない。
〇 出生後の蘇生について診療録に記載がないことは一般的ではない。

事例番号:260181
〇 胎児心拍数陣痛図の判読については、「異常なし」と判断されているが、大部分において基線細変動が減少しており一般的でないという意見と、一部基線細変動があるようにみえる部分があるため一般的であるという意見の賛否両論がある。
〇 破水入院後、分娩となるまでの約50時間、定期的に血液検査により炎症マーカーを確認しなかったことは一般的ではない。
〇 入院時に尿蛋白の有無を調べなかったことは基準から逸脱している。
〇 妊産婦が妊娠高血圧症候群を発症している状況で、分娩前日の陣痛開始以降、分娩監視装置を連続して装着しなかったことは基準から逸脱している。
〇 血圧が180/92mmHgに上昇し、胃腸症状が出現していることから、妊娠高血圧症候群が重症化したことによる子癇の前駆症状であったと考えられ、このような状態で、HELLP症候群の鑑別検査や、硫酸マグネシウムの投与、分娩進行の評価、帝王切開の検討を行わず、経過観察したことは一般的ではない。
〇 また、胎児心拍数陣痛図で一過性頻脈が消失し、基線細変動が減少していることから、高血圧による胎児の状態の悪化も疑われる。胎児の状態からも、帝王切開の検討を行わず、経過観察したことは医学的妥当性がない。
〇 分娩当日の妊娠40週4日にニカルジピン点滴開始後、血圧を頻回に測定し薬剤の効果を評価しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260180
□ 学会・職能団体に対して
本事例のように、妊娠中の健診と健診の間に起こった出来事が脳障害に関連したと推測される事例を蓄積して、今後、どのような対策を行うかについて検討することが望まれる。また、このような事例を産婦人科医が共有することが重要である。胎動減少などの胎動異常と胎児心拍異常の早期発見のために、ローリスクの妊産婦に対する分娩監視装置装着の開始時期、施行間隔について学会レベルで事例を集積し、検討することが望まれる。

事例番号:260178
〇 妊娠初期からほぼ毎回蛋白尿が陽性であるにもかかわらず、精密・確認検査を行わなかったことは選択されることの少ない対応である。

事例番号:260177
〇 妊娠41週4日、妊娠41週5日の子宮収縮薬投与の際に15分毎にオキシトシンを増量したことは、基準から逸脱している。

事例番号:260176
〇 受診後の胎児心拍数陣痛図においてレベル4(異常波形・中等度)と判断できる状況で酸素投与したことは一般的であるが、常位胎盤早期剥離を疑っている状況でリトドリン塩酸塩の点滴を開始したことについては、胎児救急として子宮収縮を緩めるという目的で投与することもあり得るため一般的であるという意見と、本剤は添付文書で常位胎盤早期剥離の際は禁忌とされていることから一般的でないという意見の賛否両論がある。
〇 常位胎盤早期剥離の所見が認められた状況でリトドリン塩酸塩の点滴を手術室入室まで継続したことは、胎盤剥離の進行を抑制する目的で投与することもあり得るため一般的であるという意見と、子宮弛緩による出血の増加となるため一般的ではないという意見の賛否両論がある。

事例番号:260175
□ 学会・職能団体に対して
妊娠中および分娩時に異常がないにもかかわらず脳性麻痺となった事例を蓄積、研究することが望まれる。

事例番号:260174
〇 その後、胎児心拍数基線が頻脈を認め波形レベル3の所見で、酸素投与をしたまま経過観察としたことも一般的である。
〇 子宮口前唇が残った状態で子宮底圧迫法を試みたことは、要約を満たしていないため一般的ではない。
〇 分娩2時間5分前以降の対応については、この間のCTGのほとんどは母体心拍数が聴取されており、胎児の状態が正確に監視されていなかったと考えられ、母体心拍聴取の可能性を考慮せずに経過観察をした対応については賛否両論がある。すなわち、CTGにおいて母体心拍数を聴取することがあり得るという事実については、ほとんど知られておらず、経過観察をしたことは通常の対応であるとの意見と、分娩2時間44分前までの波形と分娩2時間5分前以降の波形が異なる波形であることから、母体心拍を聴取している可能性を考慮して、モニター位置の確認、母体心拍数の確認や超音波検査による胎児心拍数の確認などを行うべきであるという意見がある。

事例番号:260173
〇 診療録に、妊産婦の状態や判断、説明内容などの記載がほとんどないことは一般的ではない。
〇 当該分娩機関において、リトドリン塩酸塩の投与を続けたことには、胎児蘇生法として子宮収縮を抑制し胎内環境を改善するための緊急避難的な投与としてやむを得ないという意見と、添付文書上は禁忌とされていることから一般的ではないという意見の賛否両論がある。
〇 帝王切開を判断してから手術開始まで2時間30分近く要したことは医学的妥当性がない。
〇 産科的DICの状態にある妊産婦に対して、帝王切開時に脊椎麻酔を選択したことは一般的ではない。

事例番号:260172
〇 その後、胎児心拍が確認できない状況で緊急帝王切開を施行したことに関しては、内診で臍帯脱出と診断した際に胎児心拍が確認できない状況であったものの、妊産婦の臨床経過からみて児が生存している可能性があると判断して緊急帝王切開を施行したことは適確であるという意見と、板状硬の子宮と多量の性器出血が認められ、かつ胎児心拍が確認されていないことは、臍帯脱出に加えて常位胎盤早期剥離を合併した子宮内胎児死亡の状況であった可能性があることから、この段階で妊産婦のDIC発症の有無などを確認して分娩様式を決定する必要があり、直ちに帝王切開を施行したことは一般的ではないとの意見がある。

事例番号:260171
〇 ジノプロストン錠を自宅で内服させたことは基準から逸脱している。
〇 メトロイリンテルに生理食塩水を注入したこと、および牽引したことは基準から逸脱している。
〇 オキシトシンの開始時投与量および増量法は基準から逸脱している。
〇 子宮口が全開大となっていない状態で、急速遂娩の方法として吸引分娩を選択し実行したことは医学的妥当性がない。
〇 また、約25分間にわたり吸引術を行ったことは一般的ではない。
〇 緊急帝王切開決定後、胎児徐脈が持続している状況において、オキシトシン投与を減量したのみで継続したことは医学的妥当性がない。

事例番号:260170
〇 入院後の胎児心拍数陣痛図ではレベル5(異常波形・高度)と判断される状態で経過観察としたこと、その後に吸引術を7回行ったことは一般的ではない。
〇 胎児心拍数陣痛図上、異常波形を認める状況で陣痛促進としてオキシトシンを投与したことは基準から逸脱している。

事例番号:260169
〇 妊娠38週6日、胎児心拍数陣痛図で頻脈、基線細変動の減少、遅発一過性徐脈がそれぞれ断続的にみられているが、監視を続け分娩を管理したことは一般的であるという意見と、軽度の異常波形であっても長時間に及ぶ場合は急速遂娩を検討するのが一般的で、経過観察としたことは一般的ではない、という意見の賛否両論がある。
〇 出生時の新生児蘇生は一般的であるが、その後酸素化と徐脈が改善しても、皮膚色・筋緊張が改善せず、かつヘモグロビン値が9.2g/dLの貧血が確認された状況で、原因検索をせず経過観察したことは選択されることの少ない対応である。
〇 児は生後1分のアプガースコアが3点の仮死であり、生後約2時間血糖値の測定を行わなかったことは一般的ではない。
〇 また、血糖値20mg/dL以下の低血糖が認められたが、速やかに治療を開始しなかったことは基準から逸脱している。

事例番号:260168
〇 陣痛発来後の胎児心拍数陣痛図では、高度を含む遅発一過性徐脈が頻発しており、変動一過性徐脈と判読したことは一般的ではない。陣痛促進薬の投与については、高度遅発一過性徐脈を認めており胎児機能不全の状態での陣痛促進は行わないという意見と、分娩進行度を考慮し、経腟分娩続行の可否について定期的に判断して陣痛促進を行うという意見があり、医学的妥当性には賛否両論ある。
〇 胎児心拍数陣痛図で、基線細変動が減少し高度遅発一過性徐脈が頻発している所見から急速遂娩を考慮したことは医学的妥当性があるが、この所見がみられてから分娩までに30分要したことは一般的ではない。

事例番号:260167
〇 腟分泌物培養検査を妊娠33週から37週に行わなかったことは基準から逸脱している。
〇 分娩中の母体発熱があり、分娩中に連続的分娩監視を行わなかったこと、分娩監視装置の記録速度が1cm/分で記録されていたことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数が記録されていない箇所や不明瞭な記録が多く、胎児の状態把握が困難なまま分娩監視を継続したこと、胎児頻脈に加えて遅発一過性徐脈が出現している状態で経過観察したことは一般的ではない。
〇 胎児機能不全が疑われている状況で陣痛促進を開始したことは選択されることは少ない。
〇 胎児心拍数陣痛図上異常波形を認めており、オキシトシンを増量したことは基準から逸脱している。

事例番号:260166
〇 外来の胎児心拍数陣痛図で異常が認められた妊産婦に対して、入院後、基線細変動の判読が難しい1cm/分の記録速度で分娩監視装置を装着したことは一般的ではない。

事例番号:260165
〇 妊娠38週2日の入院時の胎児心拍数陣痛図は一過性徐脈、一過性頻脈いずれも認められない。
胎児心拍数基線細変動は、妊娠36週0日までの波形と比較すると明らかに少なく、胎児心拍数基線細変動の減少を疑うべき所見であり、リアシュアリングと判断して分娩監視装置装着を中止したことは一般的ではない。
〇 入院当日夜の胎児心拍数陣痛図はリアシュアリングと判断可能という意見と、入院時の胎児心拍数陣痛図とあわせて考慮すればリアシュアリングとは判断できないという意見があり、分娩監視装置装着を中止したことは賛否両論がある。

事例番号:260164
〇 出生後に自発呼吸がみられない状態でフリーフローで酸素を投与したことは一般的ではない。

事例番号:260163
□ 学会・職能団体に対して
一絨毛膜二羊膜双胎の管理について
一絨毛膜二羊膜双胎の管理において、胎児発育、胎児脳循環状態等の臨床的評価を行う上で、超音波断層法などの検査方法が標準化されることが望まれる。
TTTSの調査・研究について
TTTSに関する症例の集積を行い、その予防と治療について更に研究が進められることが望まれる。

事例番号:260162
〇 妊娠36週、37週に行われたNSTの判読所見が診療録に記載されていないことは一般的ではない。
〇 もし、そのNSTをノンリアクティブと評価していたならばバイオフィジカルプロファイスコアリング(BPS)やコントラクションストレステスト(CST)などのバックアップテストを行っていないことは、一般的でない。

事例番号:260161
□ 学会・職能団体に対して
特発性羊水過多の診断・病態ならびに管理に関する研究が推進されることが望まれる。

事例番号:260160
〇 テルブタリン硫酸塩を投与したことは、子宮収縮抑制目的であったとすれば一般的ではない。

事例番号:260159
〇 陣痛開始時に分娩監視装置を装着せずに経過観察したことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数陣痛図上、Ⅱ児に遅発一過性徐脈を認めるレベル3の状態をリアシュアリングと判断したことは一般的ではない。
〇 ハイリスク妊娠の分娩において、分娩監視装置を途中で一旦終了としたこと、また、Ⅱ児の胎児心拍数が正しくモニタリングされていない状況で、超音波断層法等で胎児心拍数の確認を行わず経過観察したことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数が徐脈となり回復が確認されない状況で、急速遂娩を実施するまでに49分かかったことは一般的ではない。

事例番号:260158
〇 搬送元分娩機関において、早産既往のある妊産婦に対して、内診や子宮頸管長測定を行わず外来管理を継続したこと、妊娠31週に収縮期血圧の上昇を認めた状況で再検査せず経過観察したことは選択されることの少ない対応である。
〇 その後、注射用ガベキサートメシル酸塩を投与したことは選択されることの少ない対応である。
〇 その後に胎児の徐脈を認めた状況で分娩監視装置を再装着せず酸素投与のみ行ったことは医学的妥当性がない。
〇 母体搬送中の胎児心拍聴取に関する記載がないことは一般的ではない。

事例番号:260157
〇 入院後、常位胎盤早期剥離を疑い監視の強化、酸素投与を行ったこと、胎児機能不全と診断し緊急帝王切開分娩を決定したことは選択肢のひとつであるという意見と、帝王切開の決断までに55分を要したことは一般的ではないという意見があった。
〇 緊急帝王切開決定から緊急帝王切開開始まで1時間20分経過したことは、一般的ではない。

事例番号:260155
〇 血糖測定により明らかな低血糖ではないが、LFDに対してその後に血糖測定を行わず経過をみたことは選択されることの少ない対応である。
〇 同日に新生児に傾眠傾向があり、発熱や多量の発汗を認める状況で、バイタルサインのチェックや血糖測定などを実施していないことは医学的妥当性がない。
〇 生後2日、チアノーゼ、活動性の低下、低血糖、経皮的酸素飽和度の低下、冷感を認めた状況で、症候性の低血糖に対し検査、治療およびその後の血糖測定を行わずに糖水の補足と酸素投与等による処置を続けたこと、および新生児搬送とせずに自施設管理としたことも、いずれも医学的妥当性がない。

事例番号:260154
〇 妊娠29週3日の全前置胎盤で、性器出血(鮮血)を認めたことに対して、同日より入院管理のもと治療が行われたことは一般的であるが、その後出血がみられなくなったため3日後に退院とし、外来管理としたことは、賛否両論がある。

事例番号:260153
〇 メトロイリンテルを100mL挿入後は連続的胎児モニタリングが推奨されており、分娩監視装置
を間欠的に装着したことは基準から逸脱している。

事例番号:260152
〇 生後5分のアプガースコアの記載がないことは一般的ではない。

事例番号:260151
〇 急速遂娩の方法として子宮底圧迫法を実施したことは一般的ではない。
〇 吸引分娩の実施中に中断時間を挟んだことは医学的妥当性がない。
〇 CPAPを行ったことは選択されることは少ない対応である。

事例番号:260150
〇 妊産婦が受診した時刻、および緊急帝王切開を決定した時刻を診療録に記載していなかったことは一般的ではない。

事例番号:260149
〇 新生児管理としては、生後1日に多呼吸と徐脈を認めるまでの対応は一般的であるが、多呼吸と徐脈を認め、モニターで管理をするような状況となった時点で、看護スタッフが医師へ報告せず経過観察したことは選択されることの少ない対応である。
〇 生後2日に心室頻拍が出現した際の対応は一般的であるが、1時間27分後に再び心室頻拍が出現した時点の対応は、治療を継続しているため一般的であるという意見と、治療効果がみられていないことから早急に高次医療機関へ搬送しなかったのは一般的ではないという意見の賛否両論がある。

事例番号:260148
〇 喫煙の習慣がある妊産婦に対して、禁煙指導が勧められるが、説明や指導内容が診療録に記載されていないことは一般的ではない。
〇 常位胎盤早期剥離の既往があり、妊娠中に胎動減少と切迫早産様症状を訴えた妊産婦には超音波検査や胎児心拍数モニタリング、血液検査を行うとされており、妊娠35週より前に入院管理が行われなかったことは一般的ではない。
〇 新生児蘇生は概ね一般的であるが、心拍数100回/分未満でボスミン投与を行ったことは一般的ではない。

事例番号:260147
□ 学会・職能団体に対して
遅発型GBS感染症に対する疫学的調査・予防・診断・治療に対する知見の集積が望まれる。

事例番号:260146
〇 胎児低酸素・酸血症が強く疑われる状況で、児娩出までの約50分間、急速遂娩を実行せず経過観察していたことは基準から逸脱している。
〇 臍帯動脈血ガス分析を実施したことは一般的である。
〇 胎児心拍数波形の判読所見や判断の記録がなかったこと、分娩中の対応や母体の観察項目等の記録が不十分だったことは一般的ではない。

事例番号:260145
〇 一過性徐脈に対する胎児蘇生法として側臥位への母体体位変換を行ったことは一般的である。
〇 レベル4やレベル5と判断される状況においても、診療録に胎児心拍数波形の判読および対応に関する記載がなく、異常波形を認識していなかったとすれば胎児心拍数波形の判読力が劣っている。
〇 胎児心拍数波形の判読所見や判断の記録がなかったこと、分娩中の対応や母体の観察項目等の記録が不十分だったことは一般的ではない。

事例番号:260144
〇 妊娠40週3日で予定日超過の診断のもとで誘導分娩の方針としたことは選択されることは少ない判断である。また、妊娠40週3日で過期妊娠と診断名を付したことは定義に則していない。
〇 入院後、120mLのメトロイリンテル挿入後に分娩監視装置による連続監視を行わなかったことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数陣痛図においてレベル3(異常波形・軽度)と判断される状況で急速遂娩の準備を行わず子宮収縮薬の投与を継続し経過観察したことは一般的ではない。
〇 レベル4(異常波形・中等度)と判断される状況で急速遂娩を行わず、分娩まで経過観察としたことも一般的ではない。

事例番号:260143
〇 その時の胎児心拍数陣痛図は、胎児心拍数基線が120~110拍/分に低下し、基線細変動の減少が認められる状況であり、分娩監視装置を終了したことは一般的ではない。
〇 バッグ・マスクによる人工呼吸が効果的でない場合に、マウス・ツー・マウスを行ったことは一般的ではない。

事例番号:260142
〇 妊娠経過中の対応については、概ね一般的であるが、妊娠25週に非対象児の臍帯動脈拡張期血流がほぼ途絶していると判断された以降、入院管理とせずに外来管理を継続したことは選択されることの少ない対応である。
〇 基線細変動が減少から消失となり、一過性徐脈が散発する状況で、約14時間分娩監視装置を中断したことは一般的ではない。
〇 入院翌日の胎児心拍数陣痛図でサイナソイダルパターンが持続して認められるが、約9時間、帝王切開を決定せず経過観察したことは、早急に児を娩出し貧血に対する治療を行う必要があったと考えられるため、一般的ではない。
〇 Rh(D)不適合妊娠に対する抗Dグロブリンの投与に関して、分娩後6日に投与したことは基準から逸脱している。

事例番号:260141
〇 当該分娩機関では救急室到着後における胎児心拍モニターや超音波断層法などの記録が残されていないことは一般的ではない。
〇 救急室入室から緊急帝王切開決定まで31分、帝王切開決定から児の娩出まで47分で緊急帝王切開により児を娩出したことは一般的であるという意見と、帝王切開決定まで31分かかったことは、遷延一過性徐脈が頻発していると連絡を受けていたとすれば一般的ではないとする意見がある。

事例番号:260140
〇 レベル3(異常波形Ⅰ)と判断される状況で異常波形を認識せず経過観察としたことは一般的ではない。その後、レベル4と判断される状況で経過観察としたこと、レベル4と判断される状態が持続している状況でオキシトシンの点滴を再開したこと、および急速遂娩を考慮しなかったことは基準から逸脱している。
〇 重症新生児仮死の児に対して、自発呼吸を認めないため気管挿管したことは一般的であるが、アドレナリンを原液で気管内投与したことは「新生児蘇生法テキスト」に則っておらず一般的ではない。

事例番号:260139
〇 ジノプロストの溶解液に酢酸維持液を使用したことは一般的ではない。ジノプロスト投与終了後4分でオキシトシン投与を開始したことは、その時点で既にレベル3の状態であることを考慮すると一般的ではない。オキシトシン投与開始後3時間頃から高度遅発一過性徐脈が認められる状況において、子宮収縮薬の投与量を増量して継続したことは基準から逸脱している。
〇 診療録に胎児心拍数のみ記載し胎児心拍数陣痛図の判読所見の記載がなかったことは一般的ではない。
〇 アプガースコアを生後1分、5分ともに判定しなかったこと、気管挿管を実施する19分前に気管にアドレナリンを散布したことは一般的ではない。

事例番号:260138
□ 学会・職能団体に対して
子宮内で発症した早産児の脳室周囲白質軟化症の研究について
胎児心拍数陣痛図や臍帯動脈血ガス分析値に異常を認めず、さらに出生後の経過にも異常を認めない早産児において、どの程度脳室周囲白質軟化症がみられるのか、また、そのような児が一定頻度でみられる場合の調査・研究を行うことが望まれる。

事例番号:260137
〇 胎児心拍数陣痛図において、胎児の健常性を確認することが求められることから、胎児状態の把握が不十分なまま分娩監視装置を続けたことは医学的妥当性がない。
〇 NCPRでは、羊水の胎便混濁あり、口腔内吸引を行った後には、保温、体位保持と気道開通、皮膚乾燥と刺激を実施し、呼吸と心拍ならびに皮膚色のチェックを行うこととされており、早期に母子接触を図ったことは一般的ではない。
〇 人工呼吸と胸骨圧迫だけ施行し、新生児蘇生がNCPRに準じていないことは基準から逸脱している。

事例番号:260136
〇 出生直後から新生児の経皮的動脈血酸素飽和度を測定したことは適確である。異常発生から新生児搬送依頼の連絡を行うまで8時間近く要したことは、児が経皮的動脈血酸素飽和度の低下を繰り返し落陽現象がみられる状態で、酸素投与のみで経過観察をしており一般的ではないとする意見と、原因検索や対応を検討するために時間を要することはやむを得ないとする意見の賛否両論がある。

事例番号:260135
〇 破水している状態でメトロイリンテルを挿入したことは選択肢としてありうる。
〇 メトロイリンテルの容量を超えて生理食塩水を注入したこと、牽引したことは基準から逸脱している。
〇 オキシトシンの開始時投与量は基準から逸脱している。
〇 オキシトシンを乳酸リンゲル液に溶解したこと、子宮収縮薬使用中のバイタルサインの測定が3回のみであったことは一般的ではない。
〇 プラステロン硫酸エステルナトリウムの投与回数、およびオキシトシンと同時投与したことは基準から逸脱している。胎児心拍数波形の判読所見を記載していなかったことは一般的ではない。
〇 分娩前3時間頃から遅発一過性徐脈が繰り返し出現している状況において、オキシトシンを投与し続けたことは基準から逸脱している。
〇 クリステレル胎児圧出法を、急速遂娩またはその補助として行うのではなく努責のような感覚で行ったことは医学的妥当性がない。
〇 分娩前1時間頃からレベル4と判断される状態において、急速遂娩を準備または実施せず、クリステレル胎児圧出法のみ継続したことは医学的妥当性がない。
〇 吸引分娩開始前の内診所見に関して診療録に記載がないこと、吸引分娩術を6回施行したことは一般的ではない。
〇 破水時刻を分娩開始時刻として分娩所要時間を記載していることは定義を間違えている。

事例番号:260134
〇 妊娠36週2日に、胎児機能不全と診断し、入院管理により監視を続行したこと、帝王切開を選択したことは一般的である。本事例において胎児機能不全の診断から帝王切開施行までの時間が4時間27分であったことは、血流計測値や羊水量から入院時の胎児の病態が急性の低酸素・酸血症ではないと考えられることから必ずしも迅速な帝王切開を行う必要はないという意見と、胎児機能不全で帝王切開を決定したのであれば速やかに実施する必要があるという意見の賛否両論がある。ただし、帝王切開施行までに時間をかけたことに対する評価が診療録内に記載されていないことは一般的ではない。

事例番号:260133
〇 ジノプロストン錠内服の投与方法、投与間隔は一般的であるが投与中の連続モニターを行わないで間欠的胎児心拍聴取のみ行ったことは、基準から逸脱している。
〇 10分間の一過性徐脈が出現、消失した時点で、オキシトシン点滴を続行して分娩誘発を継続したことは、子宮口の開大が1横指で分娩までに時間を要することが予測されるため点滴を減量又は中止することが一般的であるという意見と、徐脈が短時間で改善しているため点滴を継続することもあり得るという意見の賛否両論がある。
〇 GBS感染予防のためにリンを静注ではなく経口投与したことは、一般的ではない。
〇 オキシトシン点滴増量の後、基線細変動を伴う高度遅発一過性徐脈が繰り返し出現しており、オキシトシン点滴を減量又は中止せず20分間経過観察したことは選択されることの少ない対応である。

事例番号:260132
〇 分娩誘発について、妊産婦への説明と同意の取得が診療録に記載がされていないことは一般的ではない。
〇 ジノプロストの維持量を超えていること、投与中、胎児心拍数陣痛図において、異常波形(レベル3)であるにもかかわらず、ジノプロストを継続したこと、ジノプロストン錠による分娩誘発を開始する以前に胎児心拍数陣痛図による評価を行っていないことは、基準から逸脱している。
〇 オキシトシンの使用について、点滴の初期投与量が20mL/時間で、約30分ごとに20mL/時間ずつ増量していること、胎児心拍数陣痛図において、異常波形(レベル4)であるのに、オキシトシンの投与を継続したことは、基準から逸脱している。
〇 子宮収縮薬の使用中、看護スタッフが胎児心拍数パターンの異常を判読出来ず、医師に報告を行っていないこと、医師は子宮収縮薬投与後に診察を行っていないこと、子宮収縮薬(ジノプロスト、オキシトシン、ジノプロストン錠)の投与中に投与継続の可否について検討しなかったことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍数陣痛図に異常が認められている状況で、分娩時に医師が立ち会わなかったことは基準から逸脱している。
〇 胎児心拍陣痛図の判読結果が診療録に記載されていないことも基準から逸脱している。
〇 出生後呼吸がみられない状態で、直ちにバッグ・マスクによる人工呼吸を行わなかったことは一般的ではない。

事例番号:260131
〇 早発一過性徐脈は一過性徐脈に含めていない可能性があり、分娩第1期において、早発一過性徐脈と軽度の変動一過性徐脈が認められているが、この時点で経過観察とし分娩監視装置を終了したことは選択肢の一つであるとする意見と、遅発一過性徐脈と判読される部分もあり、分娩監視装置を外したことは一般的ではないとする意見がある。
〇 家族からみた経過によると、分娩時お腹を押されたとされているが、子宮底圧迫法を実施しているのであれば、診療録に記載されていないことは一般的ではない。
〇 胸骨圧迫やボスミン投与が施行されていないのであれば基準から逸脱している。それらの対応が施行されたとしても、その記録がないことは一般的ではない。

事例番号:260130
□ 学会・職能団体に対して
本事例は妊娠・分娩中さらには新生児期のいずれの時期においても、児の脳性麻痺発症に関与すると考えられる異常所見を見出すことはできない。このような事例についての疫学調査や病態研究は行われていない。事例集積を行い、その病態についての研究を推進することが望まれる。

事例番号:260129
〇 陣痛誘発において、必要性、方法、予想される効果および副作用などについての説明内容が文書で残されていないことは選択されることが少ない。
〇 妊娠41週2日に子宮口開大9cmの状態でオキシトシン点滴からジノプロストに切り替えているが、2種類の子宮収縮薬を連続して使用することは選択されることは少ない。
〇 ジノプロストを維持量である15μg/分から開始することは一般的ではない。
〇 胎児心拍数図異常、子宮収縮が頻回にある状態でジノプロストを増量したことは医学的妥当性がない。
〇 異常胎児心拍数陣痛図所見に対して、原因の検索、子宮内蘇生(ジノプロスト点滴の減量を含む)、急速遂娩の準備または実行などの対応を行わずに子宮収縮薬の投与を継続したことは一般的ではない。

事例番号:260128
〇 本事例の入院時の胎児心拍数陣痛図所見には、非反復性の軽度遅発一過性徐脈が認められているが、基線細変動と一過性頻脈が認められ、児の健常性の判断が難しい事例であり、医師が胎児の状態をリアシュアリングであると判読したことの医学的妥当性には賛否両論がある。
〇 入院時、妊産婦より破水後に胎動がなくなったことを助産師に伝えられているが、継続して胎児心拍数モニタリングが行われることなく中断したことは一般的ではない。
〇 助産師が胎児心拍数を確認できなくなってから医師へ連絡するまで30分近くの時間を要しており医師への連絡のタイミングは一般的でない。

事例番号:260127
□ 学会・職能団体に対して
子宮に既往手術がない症例における子宮破裂はまれであり、大規模な臨床的調査は殆どない。その原因やリスクファクターの抽出などに関しての調査研究が望まれる。

事例番号:260126
〇 誘発分娩の経過中に分娩監視装置による記録を連続して行わなかったこととオキシトシン点滴の投与量は、「子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点」に準じておらず基準から逸脱している。
〇 遷延一過性徐脈が出現した際の対応としては、分娩監視装置による監視を継続せず、胎児心拍数が回復した4分後に分娩監視装置を中断し、オキシトシン点滴を継続したことは基準から逸脱している。
〇 家族からみた経過のとおり、子宮底圧迫法を併用した吸引分娩を6~8回行ったのであれば、一般的ではない。
〇 新生児の管理に関しては、アプガースコアが正確でなかったと考えられ、また、呼吸障害が認められていた状況で、フリーフローの酸素投与のみで人工呼吸が行われておらず、新生児仮死の蘇生法及び観察は基準から逸脱している。NICU入院時の体温が34.1℃と低体温となっていたことから、出生後から搬送中の新生児の保温ができていなかったのであれば一般的ではない。

事例番号:260125
〇 妊娠35週4日、妊産婦に呼吸苦を認めている状況でリトドリン塩酸塩の点滴投与を継続したことは一般的ではない。
〇 妊娠35週5日の時点で血圧上昇、血液検査異常、胎児発育不全、羊水量減少を認める状況で胎児心拍数モニタリングを実施しながら2日間待機としたことについては一般的な対応であるという意見と、待機の方針とせず早期に娩出することが一般的な対応であるという意見の両方がある。
〇 帝王切開決定時期について、常位胎盤早期剥離の臨床所見はなく、陣痛開始前の状況であったことを考慮すると一般的であるという意見と、医師は訪室する10分前には基線細変動消失、遷延一過性徐脈が出現している状況であり、その時点で帝王切開を決定することが一般的であるという意見の両方がある。

事例番号:260124
〇 前期破水の対応として、抗菌薬を投与したことは一般的であるが、破水入院後、母体搬送となるまでの約29時間、血液検査により炎症マーカーを確認しなかったことは選択されることが少ない対応である。
〇 入院翌日、医師の診察なくジノプロストン錠の内服を開始したことは、一般的ではない。
〇 その後の胎児心拍陣痛図で変動一過性徐脈又は遅発一過性徐脈が繰り返して出現した際、看護スタッフが胎児心拍は良好と判断したことは一般的ではない。
〇 血圧が上昇し妊娠高血圧症候群を発症した際、尿蛋白の有無を調べなかったことは選択されることが少ない対応である。
〇 母体の脱水予防の観点から点滴ルートを確保し、補液を行わなかったことは一般的ではない。
〇 基線心拍の回復に約20分を要する最下点70拍/分の徐脈が出現した際、急速遂娩の準備を行わずに徐脈から回復途中の時点で胎児心拍が回復したと判断したことは基準から逸脱している。
〇 母体が痙攣を起こした際の対応はおおむね一般的であるが、ニフェジピンにより降圧を図ったことは、高血圧に対する緊急避難的処置であり一般的であるという意見と、妊産婦の急速な血圧低下により胎児に異常を来たす可能性があるため一般的ではないという意見の賛否両論がある。
〇 その方法としての舌下投与を行ったことは、基準から逸脱している。

事例番号:260123
〇 入院時の分娩監視装置装着が11分間のみであったことは基準から逸脱している。
〇 子宮口ほぼ全開大から43分後の胎児心拍数陣痛図について、医師が異常なしと判断し分娩監視装置による監視を終了したこと、子宮口ほぼ全開大から約7時間経過しレベル3の状態が持続した状況で、約3時間半の間、分娩監視装置を装着せずドップラ法による間欠的胎児心拍数聴取が1回行われたのみであったことは基準から逸脱している。
〇 レベル3の状態が持続している状況において、胎児心拍数陣痛図波形異状の原因検索等を積極的に行わず、長時間経過をみていたことは医学的妥当性がない。
〇 レベル3の状態でオキシトシンの投与を施行したことは、選択されることの少ない対応である。
〇 陣痛促進開始から2時間45分後にレベル4、その1時間13分後にレベル5と判断される状況において、胎児の状態についての評価を行わず、オキシトシンの増量を継続したことは基準から逸脱している。

事例番号:260122
□ 学会・職能団体に対して
子宮破裂の調査・研究について
子宮破裂は極めてまれな疾患であるため、大規模な臨床的な疫学調査はほとんどない。リスクファクターの抽出など再発予防のための調査研究が望まれる。

事例番号:260121
〇 紹介元健診機関において羊水過少症や児頭骨盤不均衡の診断に際し、根拠となる診療内容が記載されていないことは一般的ではない。
〇 陣痛促進薬開始後、分娩監視装置を中断したことは基準から逸脱している。
〇 完全破水後、高度遷延一過性徐脈の出現に対し、過強陣痛と判断し陣痛促進を中止したことは、医学的妥当性がある。その後、胎児心拍数陣痛図で異常所見を認める状況で分娩監視装置を外したことは医学的妥当性がない。
〇 一連の一過性徐脈が羊水過少に伴う臍帯圧迫が原因と判断し羊水注入を行ったことは選択されることは少ない。
〇 羊水注入施行後も高度遅発一過性徐脈が認められる状況で、経過観察としたことは医学的妥当性がない。
〇 胎児心拍数陣痛図にて高度遅発一過性徐脈および基線細変動の減少が認められる状況で再度陣痛促進を行ったことは基準から逸脱している。
〇 陣痛促進薬の使用において、開始後30分で12mL/時間から60mL/時間に増量したことは基準から逸脱している。
〇 子宮口の全開大後に遷延分娩にて経腟急速遂娩を施行しているが、回旋異常があり、吸引分娩は困難であることを認識せずに行ったのであれば選択されることが少ない対応である。

事例番号:260120
〇 分娩監視装置装着以後、基線細変動の減少が認識されていないことは一般的ではない。

事例番号:260119
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離について
常位胎盤早期剥離の発生機序の解明、予防方法、早期診断に関する研究を推進することが望まれる。
情報の連携について
常位胎盤早期剥離など母児双方にかかわる重篤な疾患の特性に合わせ、搬送後に円滑に治療を開始することができるよう、重症度や緊急度など搬送元と受け入れ分娩機関の情報連携や準備・対応等の指針の作成を検討することが望まれる。

事例番号:260118
□ 学会・職能団体に対して
一絨毛膜性二羊膜双胎の管理において、神経障害発症の可能性を予測する上で、妊娠中から分娩時の胎児脳血流循環状態との関連についての臨床的評価は、世界的にも未だ充分な精度を以って行うことができないのが現状である。一絨毛膜性二羊膜双胎における脳性麻痺発症防止のためのさらなる研究が望まれる。

事例番号:260117
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離に関する研究について常位胎盤早期剥離の発生機序の解明、予防方法、早期診断に関する研究を推進することが望まれる。

事例番号:260116
〇 妊娠41週0日で分娩誘発を行ったことは一般的である。頸管未成熟によりメトロイリンテルを使用する場合に、その時点での頸管の成熟度を診療録に記載していないことは一般的ではない。
〇 メトロイリンテル挿入前に臍帯下垂のないことを確認していないのは一般的ではない。
〇 メトロイリンテル挿入後に、浣腸を実施したことは感染予防の観点から、選択されることの少ない対応である。
〇 メトロイリンテルとプロスタグランジンE2錠を用いての分娩誘発に対し、説明と同意が口頭のみであったことは一般的ではない。
〇 遷延一過性徐脈が認められる状態で、プロスタグランジンE2錠を投与したことは基準から逸脱している。
〇 高度遷延一過性徐脈が認められている状態で、医師の診察を要請しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260115
〇 1回目の外回転術実施中に胎児徐脈が出現した際に外回転術を一旦中止したとされており、この対応は一般的である。しかし、この時、胎児心拍数モニタリングなどで胎児の健常性を確認せずに2回目の外回転術を実施したことは一般的でない。

事例番号:260114
〇 妊娠36週に簡易培養検査を行ったこと、さらにその再検査で陰性だったためにGBS陰性として扱ったことは選択肢のひとつである。一方、家族からみた経過のとおり妊娠36週に検査を行わなかったのであれば基準から逸脱している。
〇 オキシトシン点滴の投与方法については、開始時投与量が基準よりも多く、増量の間隔も短い部分があり、基準から逸脱している。

事例番号:260113
□ 学会・職能団体に対して
新生児の脳梗塞について、周産期医療従事者に情報提供をすると共に、胎児および新生児脳梗塞症例の集積と現状把握を行うことが望まれる。

事例番号:260112
〇 分娩誘発を行う際の説明内容などの記録が残されていないこと、分娩誘発中に分娩監視装置を用いて子宮収縮と胎児心拍を連続的にモニターしなかったことは、「子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点:改訂2011年版」に沿っておらず、基準から逸脱している。
〇 出血の訴えがあった際に胎児心拍および胎動を確認したことは一般的であるが、内診により出血の原因を検索しなかったことは一般的ではない。

事例番号:260111
〇 入院後の胎児心拍数陣痛図所見は、レベル3ないし4であり、求められる対応は、監視の強化、急速遂娩の準備であり、腹痛があり、かつ、この間異常な心拍数パターンを示していた状況で、原因に関する究明および対処がなされていないことは一般的ではないとする意見と、入院時の超音波検査で胎盤に異常所見を認めなかったので、胎児心拍数の連続監視をしたことは基準内であるとする意見がある。
〇 出生後の新生児蘇生は一般的である。しかしボスミン投与に関しては、気管内投与時は通常10倍に希釈し0.5~1.0mL/kgで使用するとされており、本事例において100倍希釈で投与したことは基準から逸脱している。

事例番号:260110
〇 入院後、前期破水における対応として、抗菌薬を投与したことは一般的であるが、分娩までの約14時間、血液検査を行わなかったことは、妊産婦の体温や脈拍が正常であれば検査を行わないとする意見と、感染のリスクを考慮して検査を行うという意見の賛否両論がある。
〇 基線細変動が減少から消失となった直後に、急速遂娩が必要であると判断したことは一般的であるが、急速遂娩の方法として、児頭の位置がSp±0cmで子宮口が8-9cmと全開していない状態で、帝王切開を選択せず、クリステレル胎児圧出法を単独で行い、その後吸引分娩を選択したことは基準から逸脱している。
〇 その後、頻回のクリステレル胎児圧出法と吸引分娩を繰り返し、帝王切開に方針を変更するまで48分要したことは、医学的妥当性がない。

事例番号:260109
〇 胎児心拍数陣痛図で基線細変動が消失となり厳重な監視が必要にもかかわらず、連続的モニタリングを行わなかったことは基準から逸脱している。
〇 それに医師が関与していないことも基準から逸脱している。
〇 基線細変動消失であるとの報告に対し一過性徐脈がなければ様子を見るよう指示した医師の対応は基準から逸脱している。

事例番号:260108
□ 学会・職能団体に対して
常位胎盤早期剥離に関して、新しい診断技術の開発、さらなる診断精度の向上や早期診断に関する研究を推進することが望まれる。

事例番号:260107
〇 入院後ドップラにて徐脈を確認した際に、分娩監視装置による監視の強化を行わなかったことは基準から逸脱している。
〇 入院時に手術を決定していたとすると手術決定から児娩出まで約2時間要したことになり医学的妥当性がない。
〇 また、入院後1時間以降に手術を決定したとすれば、入院時にすでに常位胎盤早期剥離の所見がそろっていたことから手術決定までに時間を要したことは一般的ではない。
〇 脳低温療法が必要な症例を、それが実施できない自院で約16時間看ていたことは一般的ではない。

事例番号:260106
□ 学会・職能団体に対して
分娩時に重症の低酸素・酸血症を呈さず、分娩前に胎内で発生した異常が脳性麻痺を発症したと推測される事例を蓄積して、疫学的および病態的視点から、調査研究を行うことが望まれる。また、分娩時に明らかに異常がない場合でも、脳性麻痺が一定の頻度で発症することを周知することが望まれる。

事例番号:260105
〇 オキシトシン投与中に分娩監視装置により胎児心拍数パターンを連続監視したことは一般的であるが、その後の陣痛曲線からは過強陣痛であった可能性は否定できず、また、子宮収縮に伴い一過性徐脈が散発している状況で、オキシトシンを増量、継続したことは基準から逸脱している。
〇 オキシトシンの用法用量は、推奨している用法用量を上回っており基準から逸脱している。

事例番号:260104
〇 入院経過観察後、陣痛促進を決定・開始した状況は適応を満たしておらず基準から逸脱している。
〇 医師が、急速遂娩の目的でクリステレル胎児圧出法を併用した初回の吸引遂娩術を試みたことは、児頭が嵌入する前の状態であり基準から逸脱している。
〇 胎児仮死(胎児機能不全)と診断し急速遂娩の目的で吸引分娩を開始した状況で、児頭の下降がみられないため吸引分娩を中止し、分娩を終了させず経過観察したことは基準から逸脱している。
〇 その状況下で経過観察の間に硬膜外麻酔を行ったことは一般的でない。
〇 臍帯動脈血ガス分析を行ったことは一般的である。出生直後からの蘇生処置は一般的でない。

事例番号:260103
〇 GBS陽性のため、妊娠37週および38週に腟洗浄・クロマイ腟錠を投与したことの医学的妥当性は不明である。本事例はGBS陽性妊産婦として扱うことが推奨され、陣痛発来後分娩経過中にペニシリン系薬剤静脈投与による母子感染予防を行っていないことは、基準から逸脱している。

事例番号:260102
〇 妊娠36週6日、妊産婦から下着がぬれたとの電話連絡に対して、流出感は持続しておらず、痛みや出血もないため、経過観察としたことは一般的であるとする意見と、GBS陽性であるため破水の有無を確認することが一般的であるとする意見の賛否両論がある。

事例番号:260101
〇 入院後の胎児心拍数陣痛図から、基線細変動が消失、一過性頻脈はなし、高度遅発一過性徐脈を認めており、この状態で外来診療後に帝王切開の方針としたことは一般的ではない。
〇 生後4分までの詳細な記録がないことは一般的ではない。