本文へスキップ

看護過誤real estate

T 療養上の世話

1 転落事故

看護師の過失肯定例

○結節性動脈周囲炎(PN)で長期入院中の高齢の患者がベッドから転落し,頭部を打撲して翌日に死亡した事案
「ベッドからの転落防止措置は当然に看護する側で配慮しなければならない事柄」(東京高判平成11年9月16日,判タ1038・238)

○心筋梗塞の疑いにより絶対安静を要するとして入院中の高齢の患者が,ベッドから転落し頭部を打撲し,約1週間後にくも膜下出血により死亡した事案(東京地判平成8年4月15日,判時1588・117)

○看護師が,入院中の3歳5ヶ月の患者のベッドの転落防止用安全柵を中段まで引き上げ病室を出たところ,間もなく安全柵が落下し,患者が転落して意識不明となって死亡した事案(宇都宮地判平成6年9月28日,判時1536・93)

○幼児が,入院中の兄の病室に遊びに行き,窓に接して置かれたベッドの上で遊んでいた際,網戸が外れて約15m下の地上に転落し死亡した事案(盛岡地判昭和47年2月10日判時671・79)

○看護師が付き添いの父親に「後はお願いします」と言ってベッドの留め金をかけないまま病室を立ち去り,父親が廊下に出た際に患者がベッド脇の床に転落した事案(福岡地判昭和42年10月6日,訴月13・12・1503)

看護師の過失否定例

入院中の患者(興奮状態ではあったがベッド柵を外すほどではなかった)がベッドから転落した事案(大阪地判平成16年3月10日,ケースファイルVOL1・392)

窓枠に捕まって助けを求めていた患者を女性看護師が助けられなかった事案(東京地判平成15年11月19日,ケースファイルVOL1・390)

脳内出血により入院中の,さほど体動の大きくない患者を抑制帯を使用し上肢のみ抑制していたが,抑制帯がほどけベッドより転落し,受傷した事案
(大阪地判平成19年11月14日,判タ1268・256)

2 転倒事故

看護師の過失肯定例

○多発性脳梗塞の治療のため入院していた高齢の患者が,看護師に付き添われトイレに行き,その後「大丈夫」と一人で病室に戻った際に病室内で転倒し,急性硬膜下血腫により死亡した事案(東京高判平成15年9月29日,判時1843・69)

看護師の過失否定例

○入院中にコンセントのカバーにつまずいて転倒した事案(大阪地判平成18年12月27日判決,ケースファイル3・450)

3 誤嚥事故

看護師のみの過失肯定例

○看護師が食事介助しようとしたところ,「出ていけ」と言われ,看護師は,患者がゆっくり食べ始め,特にむせることがないことを確認して病室を出た後に窒息した事案
「食事をさせるにあたっては,嚥下しやすい食事内容にし,誤嚥しにくい食事をとらせた上で,食事介助をして少量ずつ,時間をかけて食べさせたり,患者自らが摂取する場合にもこれを見守り,むせたり万が一誤嚥が生じた場合には,直ちに吐き出させたりする対応ができるように監視するなど,通常の高齢患者以上に,誤嚥を防止するための措置を講じるべき注意義務があった」(東京地八王子支判平成16年10月21日)

○高齢の患者が誤嚥により窒息し9ヶ月後に心肺停止となったことについて,看護師に見守りが不十分である過失が認められた事案(福岡地判平成19年6月26日,判時1988・56)

○准看護師が約30分間病室を離れた間に80歳の患者がおにぎりをのどにつまらせて死亡した事案(福岡地判平成19年6月26日,判時1988・56)

○誤嚥性肺炎の治療のため入院していた患者が,看護師2名から口内に注水しながら歯を磨く介護を受けた際,水を誤って飲んで呼吸不全に陥り約8時間後に死亡した事案
男性の状態を酸素飽和度を測定するモニターで確認せずに口腔ケアを続けた注意義務違反があった(千葉地判平成22年1月29日)。

医師のみの過失肯定例

○担当看護師が扁桃肥大などがみられ五分粥・五分菜とされていた4歳の患者にバナナをむき,10分後に訪室すると,バナナを誤嚥,窒息状態となっていた事案
担当看護師は,患者の当時の具体的症状,およびこれに基づく誤嚥の危険性を知っていた具体的証拠がないから,注意義務違反は認められない。
小児科医師については,高度の扁桃肥大と診断し,耳鼻科医によって喉頭浮腫も指摘されていたことから,担当看護師に監視するよう指示する注意義務があった(東京地判平成13年5月30日,判タ1086 ・253,判時1780・10)。

4 うつぶせ寝の事故

助産師の過失肯定例

○生後3日目の男児に腹満が認められたため,助産師が新生児用コットでうつぶせ寝(顔は横向きの状態)にしたところ,約40分後に心肺停止状態で発見され,脳性麻痺となり約8ヶ月後に死亡した事案(東京地判平成10年3月23日,判時1657・72 東京高判平成13年10月17日,東高民報52・1〜12・6)

医師と看護師の過失肯定例

○うつぶせ寝保育を方針としていた産婦人科医院において,出生2日目の新生児が定刻に行われていた授乳の約3時間45分後に心肺停止状態で発見され,間もなく死亡が確認された事案(静岡地沼津支判平成8年7月31日,判時1611・106)

助産師の過失否定例

○託児所における助産師が生後84日の乳児を柔らかい敷き布団の上に横たえ世話をしたあと乳児がうつぶせ寝の状態になり,間もなく往診した医師により心肺停止状態であることが確認された事案(東京地判昭和54年1月12日,判時924・141)

5 保護衣で固定したことによる窒息事故

看護師の過失肯定例

○看護師が患者を抑制のため保護衣で固定したことにより窒息死させた事案(奈良簡略式命令昭和47年8月26日,飯田英男「医療過誤に関する研究」(法曹会,昭和49年))

6 入浴介助時の事故

看護師の過失肯定例

○看護師が『何かあったらナースコールを押すこと。(浴室の)鍵を閉めないように。』と言ったのみで,本件浴室の給湯給水設備の使用方法及び熱傷を負うおそれのある熱い湯が出ることを説明ないし注意せず,高齢の患者が熱湯が注がれた浴槽で体の約90%にやけどを負い心肺停止状態となり死亡した事案
「看護師は,亡Dが本件入浴を開始するに当たり,亡Dが本件小浴室内で熱い湯を浴びて熱傷を負うことのないよう,本件浴室の給湯給水設備の使用方法及び本件浴槽水栓から熱傷を負うおそれのある熱い湯が出る危険について説明ないし注意すべき義務があったと認めるのが相当である。」「患者としては,浴室の給湯設備の使用方法がわからない場合にまでナースコールをしてもよいものか躊躇を覚えることも少なくないと考えられる」(千葉地判平成23年10月14日)
その後T市は控訴し,東京高裁で和解成立。

○てんかん発作の疾病をもつ患者が,入浴中看護師が離れた際に発作を起こし溺死した事案(大阪高判平成11年9月1日,判時1709・113)

○看護師2名がOPCAの寝たきりの患者を入浴させる際,看護師の1人が,患者に施された永久気管瘻の仕組みを理解しておらず,通常の気管切開と同じだと考え,入浴時の防水のため,永久気管瘻に通気性のないサージカルドレープを貼付し,患者が無酸素脳症となった事案(東京地判平成18年4月20日,判タ1225・286)
    
○准看護師が,適温であるか否かの確認をするように指示しないまま引き継いだところ,看護師見習いが湯温を確認しないまま新生児を熱湯で沐浴させ,当該新生児が熱傷によりショック死した事案(岩国簡略式命令平成2年12月21日,判タ770・90)

7 じょく瘡

医師の過失肯定例

○じょく瘡の悪化が一因となって患者が死亡した事案(東京地判平成9年4月28日,判時1628・49)

看護師の過失肯定例

○麻疹脳炎に罹患しじょく瘡発症の危険性が高い患者にじょく瘡が発症した事案(高松高判平成17年12月9日,判タ1238・256)

ナビゲーション