最高裁医療判例real estate
最高裁医療判例
〇最判平17・9・8集民217号681頁
説明義務違反
帝王切開術を希望するという上告人らの申出には医学的知見に照らし相応の理由があったということができるから,被上告人医師は,これに配慮し,上告人らに対し,分娩誘発を開始するまでの間に,胎児のできるだけ新しい推定体重,胎位その他の骨盤位の場合における分娩方法の選択に当たっての重要な判断要素となる事項を挙げて,経膣分娩によるとの方針が相当であるとする理由について具体的に説明するとともに,帝王切開術は移行までに一定の時間を要するから,移行することが相当でないと判断される緊急の事態も生じ得ることなどを告げ,その後,陣痛促進剤の点滴投与を始めるまでには,胎児が複殿位であることも告げて,上告人らが胎児の最新の状態を認識し,経膣分娩の場合の危険性を具体的に理解した上で,被上告人医師の下で経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務があったというべきである。ところが,被上告人医師は,上告人らに対し,一般的な経膣分娩の危険性について一応の説明はしたものの,胎児の最新の状態とこれらに基づく経膣分娩の選択理由を十分に説明しなかった上,もし分娩中に何か起こったらすぐにでも帝王切開術に移れるのだから心配はないなどと異常事態が生じた場合の経膣分娩から帝王切開術への移行について誤解を与えるような説明をしたというのであるから,被上告人医師の上記説明は,上記義務を尽くしたものということはできない。
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