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最高裁医療判例real estate

最高裁医療判例
〇最判昭63・ 1 ・19集民153号17頁

伊藤正己の補足意見 医療水準 研鑽義務
「人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師は、その業務の性質に照らし、実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであつて(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照)、右の義務を果たすためには、絶えず研さんし、新しい治療法についてもその知識を得る努力をする義務(以下「研さん義務」という。)を負つているものと解すべきである。もとより、医師は、必ずしもすべての診療を自ら行う必要はないが、自ら適切な診療をすることができないときには、患者に対して適当な診療機関に転医すべき旨を説明し、勧告すれば足りる場合があり、また、そうする義務(以下「転医勧告義務」という。)を負う場合も考えられるのである。医療水準は、医師の注意義務の基準となるものであるから、平均的医師が現に行つている医療慣行とでもいうべきものとは異なるものであり、専門家としての相応の能力を備えた医師が研さん義務を尽くし、転医勧告義務をも前提とした場合に達せられるあるべき水準として考えられなければならない。」とした。

裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。

私も診療行為にあたる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には、診療当時の「いわゆる臨床医学の実践における医療水準」(以下、単に「医療水準」という。)であると解するものであるが、この医療水準をどう考えるかについて若干補足しておきたい。
人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師は、その業務の性質に照らし、実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであつて(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照)、右の義務を果たすためには、絶えず研さんし、新しい治療法についてもその知識を得る努力をする義務(以下「研さん義務」という。)を負つているものと解すべきである。もとより、医師は、必ずしもすべての診療を自ら行う必要はないが、自ら適切な診療をすることができないときには、患者に対して適当な診療機関に転医すべき旨を説明し、勧告すれば足りる場合があり、また、そうする義務(以下「転医勧告義務」という。)を負う場合も考えられるのである。医療水準は、医師の注意義務の基準となるものであるから、平均的医師が現に行つている医療慣行とでもいうべきものとは異なるものであり、専門家としての相応の能力を備えた医師が研さん義務を尽くし、転医勧告義務をも前提とした場合に達せられるあるべき水準として考えられなければならない。

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